2013年5月8日水曜日

ウィンドハートブレーカー 単行本発売

 前記事にしたウィンドハートブレイカーの単行本が気づいたら発売してました。














画像は自分でスキャンしたやつです。勝手に使ってごめんなさい。



 前作『ファイトじじいクラブ』からストーリーと絵心に引きつけられるものを感じる作者の山本健太郎さん。
 今回はその山本さんの最新刊『ウィンドハートブレーカー』の感想を書いていきたいと思います。このページに来る人はもう読んだ人だと思うのですが、とりあえずネタバレ注意です。

 さてではこの『ウィンドハートブレーカー』、まず目について面白いのは、作者の絵柄にこれでもかとマッチしている「田舎の離島」というロケーションと風の表現です。力強く、むしろ力強すぎて若干はみ出してるくらいの勢いを感じる絵柄と、田舎の離島という狭い島内で力を噴出するしかない島民達のキャラの強さみたいなものがマッチして、不思議なことに読んでいると島の雰囲気を自然に感じられるのです。その臨場感をさらに高めているのが、本作の重要なキーワードである「風」です。「ヒュルルル」と「ボッ」という風の音の表現が全体で一貫して使われ、読み進めるごとによりこの漫画の世界に引き込まれます。
 そしてそういった臨場感が「風守村」のファンタジックな設定を上手く吸収してくれているのか、「風守村」の設定、村人の島を守るという仕事が明かされるところはかなりワクワクします。
 しかし本作の一番のすごみはその後の展開でした。読みながら「ソーイチが風守村に入って宿無しのおっちゃんと一緒に島を守る」っていう展開を予想(ミスリードしてるハズ...)してしまうのですが、なんとソーイチは偶然だらしなく他の男にのろけているナルミを見て恋から醒めてしまうのです。そして台風上陸の夜、あることを伝えに宿無しがソーイチの部屋までやって来ます...。その時の会話にその後何度も反芻される宿無しの言葉が出て来て、最後の結末まで関係してきます。つまりここで宿無しが発する言葉こそが、物語の核だと思うのですが、なによりその言葉を宿無しが言うシーンの、共感力というか、読んでいると宿無しの心情が、嘘でない最大限までに伝わって来るような気がするのです。何度もこのシーンを読み返しました。このシーンの力はいったいどの様に生まれたんでしょう。この、メッセージを強く印象づける力こそ、フィクションの力なのだと、この漫画を読んで気づかされたました。

 こういうフィクションに大切なのはリアルさだと思います。見ている側が感じられるリアルとフィクションを繋ぐ為には、フィクション自体をリアルに作るしかありません。しかしここでのリアルさとは、宿無しが嘘とか誇張表現ではなく、切実にそう思っているんだろうな、と思わせる力のことなのです。

 そして宿無しや全ての人物に嘘を言わせない為に、作者はこの物語のすべてを綿密に作り上げる必要があるのです。その努力と工夫が臨場感や説得力につながった結果の、あの感動なんじゃないかと僕は思っています。何語ってんだこいつって感じでしょうがそれくらい感動したということですはい。みなさんはどうでしたか。

 最後まで読んでいただいてありがとうございました。

  




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